メインテーマ 山でスズメバチやマダニから身を守るには
登山研究集会第4分科会で講演会を実施(11月11日) 〜 会場で熱心に講演に耳を傾ける聴講者の皆さん 〜 | ||
◆ 山でスズメバチに刺されないようにするにはどうすればいいのか!
一般社団法人北海道ペストコントロール協会 副会長 種田 英雄氏の講演より 資料・札幌市保健所 「ハチに刺されないために」 より抜粋 | |
1、北海道にいるスズメバチの種類
日本には16種類、北海道には14種類が生息している (オオスズメバチ、クロスズメバチ、ケブカスズメバチなど) その他ではミツバチ類、マルハナバチ類も刺す | |
2、スズメバチの生活史
5月 冬眠から目覚めた女王バチが、巣作りの場所を探す。 6月 働きバチが羽化する 7〜8月 働きバチが誕生、巣が大きくなる この時期が最も刺されやすい 9月 新女王バチが誕生、巣が最大になる 10〜11月 新女王バチが冬眠 | |
3、スズメバチの巣はどこにあるか
セイヨウオオハナマルバチが大雪山系旭岳姿見、ヒサゴ沼で目撃 スズメバチ類も森林限界まで生息か | |
4、スズメバチに刺されないために
スズメバチが人を刺すのはハチ自身や巣を守る為 刺されないためには、刺激を与えない、興奮させない事が重要 巣に近づかない、静かにその場を離れる 服装は長袖シャツ、白っぽい服装 大きな音をたてない 匂いの強い整髪料や香水は避ける | |
5、スズメバチに刺されたら
@刺された場所から速やかに離れる A流水で良く洗い、手で毒液を絞り出す B薬(抗ヒスタミン軟膏)をつける C病院(皮膚科、内科)に行く |
2018年9月2日美瑛富士トイレパトロールで発生したハチのインシデント |
◆ スズメバチによる刺傷被害を防ぐには 自然保護委員会 伊吹省道
2018年9月2日美瑛富士トイレパトロールの連盟チームがスズメバチの一種と思われるハチに刺されました。 10名のパーティでしたが、先頭の2名を除いた後続の8名全員が刺されました。 登山道脇の切り株の根の下に巣があったのですが、ハチが飛んでいなかったので先頭の2人は何事もなく通過しましたが、 歩く振動が巣を刺激したのではないかと思います。 多くの登山者が刺されましたが翌日には地元の山岳会によって駆除されました。 1.今後の対策として 1)登山道の近くをハチが飛んでいる時は、巣が近くにある事を疑い、安易に近づかない事。 2)ハチが近づいてもあわてて走って逃げたり、手で払ったり声をださない事、もし、逃げた場合はハチは動くものをしつこく 追って刺すので数か所は刺されることを覚悟する事。 3)もし、ハチが近づいてきたら、背を低くして後ずさりしながらその場を離れる事。 2.スズメバチに刺されないようにするには「スズメバチ忌避剤」を使いましょう 1)スズメバチが嫌う臭いをヒントに高知大学が「スズメバチサラバ」を製品開発しました。 2)スズメバチにスプレーすると、殺さずに一時的に攻撃性を失わせるという効果があり、最大噴霧有効距離は4m程度、 シュッとひと吹きしてスズメバチの攻撃本能と抵抗力を消失させ、その間に避難します。 攻撃本能を消失するのは約5分間。 食品添加物が主成分なので人はもちろんミツバチに対しても毒性はないとのことです。 3.「スズメバチサラバ」の使い方(100ml:1,620円税込み+送料800円) 1)スズメバチが近づいてきた時にシュッとひと吹きしてその場を離れる。 2)巣の周りを飛んでいるときは巣に向けてシュッとひと吹きして通過する。 3)万一ハチに刺された場合、ハチの集団に向けてシュッとひと吹きしてその場を離れる。 4.スズメバチに刺された時の「ハチ毒」の恐ろしさについて 1)スズメバチの毒液は色々な毒の混合物で別名「毒のカクテル」と呼ばれる。 2)毒液が体内に入ると、速やかに皮下組織に拡散し、さらに血管を通じて全身を循環するので激しい痛みや 患部の炎症と腫れ、しびれなどが起こります。 3)また、めまい、嘔吐、腹痛、じんましん、呼吸が苦しいなどの全身症状(アナフィラキシー反応)が一つでも出た時は 「エピペン」を自己注射して救助を要請します。 4)アナフィラキシーショックという重度のアレルギー反応を起こした場合は1時間で「心停止」するといわれています。 ハチ毒による死亡事故は年間30〜70件あります。 5.スズメバチに遭遇した時を想定して持つ装備について 1)スズメバチ忌避剤の「スズメバチサラバ」を持つ。 2)ハチ毒を吸い出す「ポイズンリムーバー」を持つ。 3)医師処方薬「リンデロンVG軟膏」又は同等の市販薬「ベトネベートN軟膏AS」を持つ。 4)全身症状(アナフィラキシー反応)が出た時に使用する「エピペン」を持つ。 |
◆山でマダニに咬まれないようにするには!
北海道立衛生研究所感染症部 医動物グループ 伊東 拓也氏の講演より (抜粋) |
1、マダニとはどんな動物? 節足動物、クモの仲間、エサは動物の血のみ 2、北海道のヒト刺咬マダニについて 大部分はシュルツェマダニとヤマトマダニ 3、道内でマダニが媒介する感染症 ・ライム病〜抗生物質有り ・ダニ媒介性回帰熱〜抗生物質有り ・ダニ媒介脳炎〜日本では未認可だがワクチン有り 4、マダニから身を守るには 1)行動に注意 ・登山道のササになるべく触れない様に歩く ・道のわきでの休憩、野営時にも注意 ・服に付いていないか、休憩時にチェック 2)服装に留意 ・マダニが付きにくい平滑な服 ・付いたのが判りやすい淡色の服 ・袖、裾、襟からマダニが進入しにくい服 ・登山用のタイツ、長袖シャツ、ゴアテックスのアウターが良い ・下山後は速やかに着替える ・温泉などで全身をチェックする ・虫よけ剤も活用する 3)もしマダニに食いつかれてしまった時は ・無理に除去しない ・爪などでつぶさない ・早ければピンセットやダニリムーバーで除去できる事も ・除去出来ない時は、皮膚科や外科で除去 ・除去したマダニはしばらく保存 ・除去後2週間ほどは発熱など体調の変化に留意 |
登山者のマダニ対策〜虫よけ剤のフィールドテスト結果について〜 自然保護委員会 目的:虫よけ剤は登山者のマダニ対策としてどの程度有効なのか実際に観察すること。 方法:白地の布で膝上までのロングスパッツを作成し、片方に虫よけ剤をスプレーし、もう片方は無処理の ままで林道の草むらを10分間歩いて、マダニの付着数と付着したマダニの動きを観察する。 虫よけ剤用は4枚のスパッツを作成し各々テストした。 判定:@忌避効果 ―>マダニが虫よけ剤をスプレーした布から逃げるか、自分から「落下」すること。 A這い上がり阻止効果―>マダニが乗り移った靴から上に向かって膝まで這い上がって来ないこと。 B付着数の軽減効果 ―>忌避効果と這い上がり阻止効果の成果から付着数が軽減すること。 1.観察結果のまとめ @マダニは草むらの葉の先端で待ち伏せしており、人間の呼気の二酸化炭素や体温、振動などをキャッチ して葉から靴に乗り移ったマダニは、膝に向かって這い上がって来る。(草丈は5cm〜25cmくらい) マダニは数分で足元から肩まで這いあがってくる。 Aこのマダニの「這い上がり行動」を阻止できるかどうか、また自分から「落下(逃げる)」して行くか どうかで虫よけ剤の忌避効果を判定した。 Bその結果、テストした虫よけ剤4種類はマダニの付着数を軽減する効果があり、1匹も膝まで這いあがらず、 途中でマダニはみずから落下して逃げた。 付着していたマダニは全て靴の上であった。虫よけ剤の効果を 得るにはムラなくスプレーする事が重要であり、すき間などにムラがあると必ずマダニは入り込むので注意が必要である。 C靴やスパッツにはディート30%を使い、素肌や服にはイカリジン15%を使うことを推奨します。 なお、虫よけ剤ではマダニは死にませんので誤解の無いようにしてください。 D注意事項として、ディート30%は使用制限があり、12歳以下の小児には使用しないこと、ストッキングの上から スプレーしないこと(生地が傷む場合があります)、腕時計などのプラスチック製品は変色のおそれがある のでスプレーしないこと、合成繊維は変質しやすいので注意すること、などが容器の箱に「取り扱いの 注意」として記載されています。 2.マダニが媒介する感染症のリスクについて @マダニに咬まれるとマダニが媒介する感染症に感染するリスクがあります。 A北海道で発症している感染症はライム病、回帰熱、マダニ媒介性脳炎(5例発症、内2例死亡)があり、 発症地域が広がっています。 B今年の5月31日には旭川の40代の女性が山菜採りで右肩をマダニに咬まれ、マダニ媒介性脳炎の発症が 確認されました。厚労省の健康局結核感染症課は6月1日に「ダニ媒介感染症に係る注意喚起について」 の文書を各都道府県の衛生主管部宛に発信しました。 Cなお、「マダニ媒介性脳炎」にはワクチンがあり、札幌市立病院感染症内科で希望者にワクチンを 接種しています。料金は3回で32,227円。在庫の関係上、事前予約が必要です。 3.登山者のマダニ対策について @素肌の露出を少なくして、マダニの衣服内への侵入を防ぐ対策をとり、首周りにはタオルなどを巻き、 「耳」にも虫よけ剤をぬりましょう。明るい色の服がマダニを発見出来ます。 A草から靴に乗り移ったマダニは膝に向かって這い上がって来るので、スパッツを装着して裾からの 侵入を防ぎ、靴、スパッツ、ズボンに虫よけ剤をスプレーしましょう。 B草むらに直接座らないこと、ザックを草むらに置いた時はマダニの付着に注意し、「ザック」にも 虫よけ剤をスプレーしましょう。 C登山をする時は携帯用の虫よけ剤を持ちましょう。 D虫よけ剤の有効成分の濃度の違いは持続時間の差であり、忌避効果の程度に差はありません。 誤解のないようにして下さい。 ちなみにイカリジン5%の忌避効果の持続時間は6時間、15%はおおむね6〜8時間。 ディート10%の持続時間は4〜5時間、30%は5〜8時間とメーカーが発表しています。 E医薬品医療機器総合機構によるとイカリジン5%とディート10%は同等の忌避効果があるとのこと です。従ってイカリジン15%とディート30%は同等の忌避効果があるということになります。 Fなお、ディート10%は6歳未満の乳児には使用しない、6ケ月以上2歳未満は1日1回、 2歳以上12歳未満は1日1〜3回の使用制限があるので取り扱いに注意が必要です。 容器の裏側に小さい文字で書かれている有効成分と注意事項を面倒でも読みましょう。 |