2019年度 登山研究集会・第4分科会 自然保護部門

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2019年度は2回ヒグマ勉強会を開催しました


近年、札幌近郊にヒグマの出没情報が頻繁に出るようになったことからシーズン初めとシーズン終盤の2回にわたり
「ヒグマの生態を知る」勉強会を開催しました。

ヒグマと遭遇しないためには、どうすればいいのか!について学びましたが、やはり、「ヒグマの生態を知る」ことが
大事だとわかりました。

勉強会開催日
(1)シーズン初めの6月12日(水)18:30〜20:20エルプラザ2階研修室
  参加者:会員15団体52名、会員外2団体2名、一般13名、合計67名。
(2)シーズン終盤の11月10日(日)登山研究集会第4分科会9:30〜11:50
  参加者:会員14団体48名、会員外1団体1名、合計49名。
(3)講師:2回ともNPO法人エンビジョン環境保全事務所の早稲田宏一氏にお願いしました。
  

◆ 講義内容 ◆

1)ヒグマの生態
 @ヒグマの大きさ
  オス:200〜400kg メスよりオスが大きい。
  メス:100〜150kg。
  子供:生まれたときは400g。
  子供は小さく生んで大きく育てる。1〜2月の冬眠中に生み、穴で子育てをして、
  春の5月頃に穴の外に出て来る。
  
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ヒグマの子供の大きさ:1歳くらい ヒグマのメスの大きさ ヒグマのオスの大きさ

 Aヒグマの食べ物
  春  :フキのとう 冬眠中は一切食べないので、春先は少しずつ草類を食べている。
  春〜夏:フキ・セリ科の食べ物。フキは横からかじるので茎の一部がかじり残る。
      エゾニュウは根元からかじる。 
  秋  :山ぶどう・コクワ。

 Bヒグマの歯とオオカミとの比較
  共通する歯  :牙、動物を食べるときに使う。
  ヒグマの奥歯 :平らになっており、すりつぶすときに使う。
  オオカミの奥歯:ものをかみくだく歯。
  
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 大きい頭:ヒグマ
 小さい頭:オオカミ
 ぬいぐるみ:ヒグマの新生児の大きさ
                      


2)ヒグマの痕跡を識別する事が大事
 @ヒグマのフン
  a)草を食べたフン:山ぶどう・コクワなど草の繊維が分かる。
  b)クルミのフン:フンからクルミのかけらが出てくる。
  c)動物を食べたフン:エゾシカを食べた時はフンに白い骨が混じる。 
  
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a)草を食べたフン b)クルミを食べたフン c)エゾシカを食べた白いフン

 A冬眠の穴
  入り口は小さく、中は人間の大人が座れる高さがある。
  床は笹・草などを敷いてベッドのようにしている。
  


3)ヒグマの行動
 @発信器によるヒグマの行動調査
  苫小牧市近郊で実施した。 
  メスの行動:10km×10km 。
  オスの行動:40km×40km オスはメスの4倍。
  
 Aヒグマによる人身事故(平11年〜30年の過去20年)
  基本的には、むやみやたらに人を襲う動物ではない。
  死亡18人。
  事故の多くはヒグマを捕獲しようとしたとき。
  ヒグマと突然に出遭わせたとき(特に親子には気をつける)。
  
 Bヒグマに出遭わないようにするには?
  ヒグマに気づいてもらう動作をする・器具を使う。
  山や森では音を出す:鈴・ラジオ・声・手をたたく。
  直線の見通しのきく道は問題ないが、相手が見えない曲がり角では、手前で手をたたいたり、
  声をだして相手に気づいてもらう。
  ヒグマのフンや足跡の新旧を見て、最近のものかどうかを判断する。
  


4)痕跡の見分け方
  @フンの見分け方
   大きさ:大きな俵型、直径5cm程度。
   「内容物」 同じ食べ物が多く、消化が悪いと思われる。

  Aまぎらわしいフン
   a)タヌキのフンはためフンと言われるように、全体的に細く、新旧のフンが混じる。
    強い不快な臭いがする。 
   b)エゾシカのフンは細かくすりつぶされている。フキの葉が裏返しに落ちているときは、
    エゾシカが食べた痕跡です。

  Bつめ跡
   トドマツの木が多く、山ぶどう・コクワなどを採るため木に登ったとき跡がついた。
   にたものにエゾシカの「つの」のとぎ跡がある。
  


5)それでもヒグマに出遭ってしまったら!
  @ヒグマを刺激しない。
  A決して走って逃げない。
  B静かに戻る。

  Cヒグマの子供を見たらすぐその場から立ち去る。
  Dヒグマが立ち上がる行動は周りを確認する行動なので、決してあせらないこと。
  Eヒグマが突っ込んでくるときは、四足で走って来る。速度は時速40kmと速いので
   走って逃げてもすぐ追いつかれてしまいます。

  F人を見て逃げるヒグマは正常。
  G人を見て逃げないヒグマは、警戒心が薄い。同じヒグマを目撃しても個体差があるので、危険度が違う。
   写真を撮るなどの好奇心は事故のもとになります。
  H若いヒグマ、特にオスは要注意です。
  


6)山や森で決してしてはいけないこと
  野外に決して食べ残しなどを埋めたり、捨てたりしないこと。
  人間の食べ物の味を覚えたヒグマは非常に危険であり、その食べ物に異常な執着を持つ。
  ヒグマは知能が高く、頭がいいことを忘れないことが大事です。
  
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講義風景 講義に集中する会員一同 ヒグマの足跡、大きい〜後足、手のひら型〜前足
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札幌市近郊の藻岩山周辺のヒグマ出没情    


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